2014-07-03

2014年7月3日

その日はへとへとでした。

「疲れ果てているから『いろはにほへと』の『へと』なんだとしたら、現代語で言えば『えおえお』かしら。いや、ここまで疲れてたら『をんをん』だなー」

どうでもいいことを考えて気を紛らわせながら、最後の力を振り絞ってスーパーへ。
レジに辿り着く頃にはエネルギーはゼロになっていて、喫茶店に入ってエネルギーチャージをしなければ帰れないほどになっていました。

そのとき、困っているような気配が。目をやると、女の人が歩きながら何かを探しているようでした。私と同じような年頃でしょうか。身体の動きが不自由そうです。
すると、製氷機の前で立ち止まり、今度はずっと眺めています。初めて使うタイプなのか、右から見て左から見て、下にかがんで…

さて、どうしようかな、と一瞬考えました。
若い方で身体が不自由な方独特のキリッとした感じがあります。ご自分で解決したいのかもしれない。話しかけないでほしい、そんな空気に包まれているようにも見えます。
周りは皆、見ないフリを決め込んでいます。

しばらくしてもまだ製氷機を眺め回しているので、嫌な思いをされませんようにと祈りつつ、「氷をお取りしましょうか?」
怪訝そうに振り向いた顔が、フワッと柔らかくなり、「でも、悪いわあ」
ホッと一安心して、「とんでもないっ」
よく見ると、両手を使って力一杯引かないと開かない扉と、「袋は後ろのレジ台のをお使いください」の文字。杖を使う方には大きな関門がいくつかありました。
むしろ声をかけるのが遅かったのだと恐縮する私に、その方は動きづらい身体で振り返ってまでお礼を言ってくれました。

その方と別れた後、身体にエネルギーが戻っていることに気がつきました。荷物を持つ手には力が漲り、足は前に出ようとしています。それは不思議なほどの違いでした。
おそらく、その方が感謝の言葉と共にくださったものだったのでしょう。氷を取るなんて、本当に本当に些細なことだったのですが、その前にエネルギーがゼロだったので、その前後の違いに気がついたようなのです。

こうやって私は生きていられるんだなあ。人からエネルギーを頂いて生きているんだなあ。

喫茶店に寄る必要もなくなり、『をんをん』だった私は、『あいあい』な気分で帰途につきました。
「あ、始まりが『あい』なのは悪くないな」と、やはりどうでもいいことを考えつつ…