2015-04-24

2015年4月24日

「やこちゃん、これ見て!」と姉が小学生の姪の前髪をかきあげました。
「え?なーに?」
「ほらほら」と眉毛あたりを指さすので、ジーッと見たら、あ、ありました。長い毛が一本、眉毛の間からビヨーンと伸びています。

「わあ、懐かしい〜!」

そうです。私は小学生の頃、眉毛から伸びてきた1本の長い毛を育てていました。
途中から白くなり始めましたが、大切に育てていたら伸びに伸び、とうとうアゴにまで到達しました。

朝起きるとまずその眉毛の伸び具合を確かめるため、ズズズーッと指を滑らせて、一人喜んでいました。
授業中、難しい問題があると、それの根元から指を滑らせながら考えると不思議と解けたものでした。

男友達には異様がられたものですが、オトコオンナと呼ばれていても全く意に介さないタイプであったせいか、むしろ誰も持っていない宝物を手にしているぐらいの気分でした。

ある日、朝起きて、いつものように眉毛を触ってみたら、あるはずのものがありません。
慌てて鏡に走って行きましたが、影も形もありませんでした。

あの時のガッカリしたこと。
これ以上落ちないほど肩を落としていたことと思います。
また伸びて来ないかと毎日鏡を覗き込みましたが、もうお目にかかることはありませんでした。

それから何十年もして、久しぶりに小学生時代のお友達に会った時のこと。
「やこちゃん、あの眉毛どうなった?」
「え?眉毛?…あーー!」
と、それこそ何十年ぶりにあの眉毛を思い出しました。
私とセットに何十年も覚えてもらっていたあの眉毛。
可笑しくなりながらも、あの慈しむような気持ちを思い出しました。
ああやって大切にしていると、自分の身体の中にも、お友達の記憶にも残っているものなんですね。

そして、姪に生えてきた異様に長い眉毛。
「遺伝かしら〜」
懐かしい友人に会った気分です。
「いいな、いいな」「育ててね、切っちゃダメよ」

でも、次の日、当然のように切られていました。
小学生の女の子が、私に見せてくれようと、しばらく切らずに取っておいてくれたと考えただけで嬉しくて、そして、やはり昔の私は変な小学生だったのだと改めて悟りました。

また生えてきてくれないかな。

2015-04-16

2015年4月16日

人生で何月の記憶が一番多いですかと問われたら、4月と答えます。

一年の計は元旦にありと気を引き締めてみたところで、幼稚園から大学まで、4月に始まりを強制されてきた身体の記憶の積み重ねには到底及ばず、この月の緊張感に包まれた中での新しいものとの出会いは記憶に深く刻まれています。

不安症の私にとって、4月は耐える月でした。
…と、格好をつけたところで、緊張し過ぎると視野が狭くなり、結局はなんかやらかして、気が抜けて、チャンチャンなんですよね。

大学の入学の時もそうでした。
仙台から東京へ。そして、周りには知り合いが一人もいない。
入学式からして、どんな格好をしたら良いか分からず、雑誌をチェックする毎日。どうにかイケてそうな洋服を揃えました。

で、入学式当日。
式の1時間前に上京した親と待ち合わせて、いざ会場へ。
さあて、着替えるか。
…と思ったら、入学式の服がない!
仙台に忘れてきたのでありました。

もう買いに行く時間なんてありません。
結局、母親の服を着せられて入学式へ。
イケてる服のはずが、そこそこのおばさまの服に身を包まれている自分。
むしろ知り合いがいなくて良かったと胸を撫でおろしながら、やっぱり決まらないなと苦笑いしたことを覚えています。

そして4月の緊張から解放される5月の連休の輝き。
その安堵感も身体に染みついています。

ところで、今年のゴールデンウイークは、国立のコートギャラリーというところで、いつも私のコンサートの舞台美術をしてくださる川合牧人さんが、『川合牧人展・陶 ー白のゆるやかな視線ー』を開催します。お花は手島久子さんです。コンサートで話題になったゴロゴロにもまた会えるだけではなく、東京では珍しい穴窯で焼いた器にもお目にかかれるようです。

会期中の5月2日3時より、私もそちらでミニコンサート(無料)をさせて頂くことになりました。
コンサートのタイトルは「かげろひて」。同名の曲をこれのために作曲しました。

4月の緊張が緩み、陽の光が眩しく感じられる頃でしょうか。
お時間がある方、どうぞ遊びにいらしてくださいね。