2015-07-31

2015年7月31日

少し前になりましたが、「板橋文夫・梅津和時ジャズコンサート」に行ってきました。

会場は鎌倉の生涯学習センターのホール。多くの人々がたむろする日常そのものといった空間を抜けたその先にどうにか見つけたジャズコンサートのチラシ。
それが鎌倉らしい、というべきか、主催の鎌倉はなし会の秋山真志さんのしかけというべきか、とにかくある種の特別感が湧いてきます。

板橋文夫さんは、私のとても好きなピアニストです。人間の生き方としても背中を見せてもらっている気がします。
ジャズピアニストという枠組みを、マメのある太い指でぐにゃりと押し広げて、「板橋文夫」そのもので生き、演奏しているという感じと言ったらいいでしょうか。

初めて舞台で板橋さんの演奏を聴いた時、酔いどれのような風貌と、その音楽の繊細さと真面目さとが共存していることが妙に面白くて、そして、その音が次第にうねりつつ自由に形を変えていくことに感激したのを覚えています。

ピアノから出てくる音は、自分の心に一枚もの衣を纏わないもので、おそらく人生の中で多くのものと向き合いながら素手で形づくってきたような、無骨さと細やかさを兼ね備えた温かみを感じさせるものです。

板橋さんの音を聴くと、自分はまだ十二単ぐらい着ているような気がしてきます。それらを一枚でも脱ぎ捨てれば、音も飛び跳ね始めるのかしら……

今回は、サックスの第一人者として活躍する梅津さんとのコンサートでした。会場の趣きだけではなく、いつも夜のライブハウスを賑わす客層とは全く違います。まさしく老若男女。

板橋さんは板橋さんのままに激しい中に優しさが溢れ、梅津さんはやはり梅津さんらしく皆の気持ちを歌心で引き上げつつ、ひとつにしていきます。

終わってから、会場から出て来る人々は、友達がいれば笑い合い、1人でいれば心の中で喜びを噛み締めているような顔でした。
1人1人が、人間として、きちんと向き合った後の満足のようなものを感じているようでした。

音楽はやっぱり人間そのものなんですよね。
なにより人間としてどうありたいかを感じさせてくれるいいコンサートでした。