2014-12-17

2014年12月17日

先日、科学者の国際会議のレセプションで箏の演奏をしました。
ヨーロッパを中心とした外国の研究者の方々が、箏の奏でる世界に興味を持つのだろうか…、乾杯後のざわめきの中に埋もれるのであろうと、心の準備をして出かけました。

ところが、それは静かな時間でした。
乾杯のあとのあのざわつきも嘘のように、こちらが奏でようとするものを感じようとして、ひっそりと息をして頂いているのが分かりました。

終わってから、言われました。
私達は太陽電池を研究しているのですが、光という耳に聴こえない波を扱っています。音楽は耳に聴こえる波です。
波は一様ではなく、機微があるということが分かってきています。

波の機微?

貴女が奏でた音は波として私達に届き、そして、私達も音がしない波を貴方に届けています。
その波を感じて、貴方はまた次の波を出すのです。

「では、私が弾きながら途中からお客さまが舞台で演奏しているのを聴いている気分になるのはそういうことでしょうか?」

そうしたらニコッとされて、それは間違いではないと思いますよ、と。

そして、箏は、演奏しながら狂った音を調律するということに非常に驚かれていました。
宇宙は、そのリズムを時々微調整していることが分かってきているそうなのですが、その営みに通じるところがあるようなのです。

「じゃあ宇宙も常に調律しているのですね」の言葉に、嬉しそうに頷いてくださいました。

波の機微…
短い時間ではその一部しか知ることは出来ませんでしたが、深いところに響きました。
これから私の中で何度も聴こえてくる言葉になるでしょう。

最後に言われました。
だから、私達研究者は貴方たちの奏でる音楽が好きなのです。

あの静けさの理由がはっきり分かりました。
耳でも、身体でも、波を受け取ろうとしてくださっていたのでした。