今年も大好きな季節が終わってしまいました。
花のひとひらのように美しい手のはためき、蕾が開く音が聞こえてくるかのような微かな空気の揺らぎ、人はなんて美しいものなのかと心震わせる季節です。
年明けから、ひの特別支援学校の音楽の授業にお邪魔させて頂きました。
3年間ご一緒した生徒さんたちは昨年卒業したので、今年は新しい生徒さんたちです。
実は私は、とても分かりづらいひどい人見知りです。新しい人と会う時、身体も心もまるで自分のものじゃなくなるような居心地の悪さを感じます。
でも、ここでは安心です。
緊張しないということではなくて、緊張するのが当たり前だからです。
初めて会ったら平気ではいられない。
なんで隠さなきゃいけないんだろう。
私はよそ者です。
でも、よそ者が皆んなの前に立つ大変さを、皆さんよく知っています。
「サトウ先生、頑張ってー!」って口々に応援してくれる声に、照れながらガッツポーズ。
お箏の音をよく聴いてくれて、心地よいシーーンとした音で部屋が満たされます。
途中で1箇所音がカスれてしまったら、小さな声で「頑張れー、頑張れー」って言ってくれている生徒さんもいます。何十回も!
生徒さんもいっぱい弾きました。
絃を撫でた後にずっと手を空にかざしている生徒さんがいます。
音が生まれるのって魔法ですよね。
風がとっても好きで、風を感じるとそうやって手をひらひらとするんだそうです。
風がとっても好きで、風を感じるとそうやって手をひらひらとするんだそうです。
ひたすらに絃の上で爪を動かしている生徒さん。
表情が全く変わらないまま私と見つめ合っていたら、ある瞬間空気がほどけました。
同時に周りの先生方の「わあ!」という声。
外しようのないまさに今。
目に見えるものはほとんど変わらないのに。
爪の動かし方を教えたくなり近寄ったら、唇をぷくって膨らませました。
ごめん、ごめん。
そっと離れました。
唇ってこんなに愛らしいんだ。
はちきれる笑顔の爆発力。
笑顔を見て涙が出てくることだってあります。
あの爆発で、星が軽く1個は出来たかも。
先生が、「お箏に似せて作ったお菓子は何でしょう」というクイズを作ってくれました。
苺のショートケーキと八ツ橋とポッキーの写真が並びます。
迷わずショートケーキに手を挙げる生徒さんたち。
ホントだ!
何で気がつかなかったんだろう。
赤い苺がのったショートケーキを見た時、身体が嬉しそうにするのって、箏を弾いた時とそっくりです。
私が出来ること、それはもちろん何にもありません。
感動するぐらいしかできません。
だったらめいっぱい感動しちゃおう、ってことで、準備としての箏の調絃を、自分で感動するまでって、いっぱい時間をかけてやってみました。
そっかぁー
私にだって与えられているんだ。
ピタゴラスだって、こうやってドレミファを発見したに違いない。
手をひらひら。
風が生まれます。
生んだ風に自らが吹かれます。
生んだ風に自らが吹かれます。
手をひらひら。
私たちはこうやって景色をかたちづくってきたのかもしれない。
まさに生まれいづる今に心を揺らしながら、これを愛おしめばいいのだと教えられた気がします。
名残惜しいこの季節。
ありがとうをいっぱい身体にためて、また新しい今に心をゆだねます。
名残惜しいこの季節。
ありがとうをいっぱい身体にためて、また新しい今に心をゆだねます。