2014-03-19

2014年3月19日

箏を弾くようになり、特に意識するようになったのは倍音の存在です。

字が表す通り、倍の音なのですが、何が倍かと言うと、それは音の振動数です。理科で少し教わりますが、音は波であり、単位時間あたり何回振動するかで音の高さが決まります。例えば、オーケストラで音合わせの時に出すラ(A)の音は、1秒間に440回振動します。
それぞれの音の高さには固有の振動数があるのです。

私が箏でドの音を出した時、ソの音が聞こえたり、ミの音が聞こえたりします。それが倍音です。元の音の整数倍の振動数を持つ音が、同時に響くのです。ドを弾いた場合は、ドの整数倍の振動数を持つ高いソや、更に高いミの音が同時に鳴り始めるのです。

倍音は小さな音なので認識はしづらいのですが、ドの音を弾いてもドの音だけが鳴るのではありません。色んな音が混じっているのです。それがどういう混じり方をしているかで、音のニュアンスが全く異なります。どのような色合いを出すのに、どの絵の具をどのくらい混ぜて、っていうのに近いのかもしれません。

箏の低音の絃をはじくと、比較的はっきり倍音が鳴ります。それに合わせて、音の並びを作り、協和する数音を一緒に鳴らすと、それはそれは美しい和音を奏でられる楽器となります。
ピアノの平均律のような自由さはないのですが、吸い込まれるようなハーモニーが出来上がります。

人の声にももちろん倍音があります。その倍音の要素をフィーチャーしたものにモンゴルのホーミーがあります。ホーミーは、一人で二重唱しているように聴こえるものだと聞き、一人で練習を始めました。もう十何年も前の話なので、すぐにYouTubeで検索することも出来ず、すべては想像です。
毎日お風呂で練習しているうち、バナナの叩き売りのおじさんのような声で歌うと、同時に高い声も目立って出てくることが分かりました。面白くって面白くって、歌いまくっていました。
そうしたら、箏で唄う時もおじさんの声と高い声が出るようになってしまいました。これはいけない、と慌てて練習をやめました。

このたび縁あって、ホーミーや口琴、ボイスパーカッションを奏でるモンゴルの方と弾く機会を頂くことになりました。
先日初めて生ホーミーを聴いたのですが、若い青年の口から出てくる、バナナの叩き売りのおじさんの声。私は間違えていなかった!
彼は高い声を同時に奏でるホーミーはあまりやらないようで、ホーミーと言っても色々な種類があると教えられました。

そしてモンゴルの口琴も聴きました。不思議な倍音が響き、音がどこに着地するのか分からない動きが、知らないところに迷いこんだような、でも懐かしいような何ともいえない感情を呼び起こします。
モンゴルの倍音に対する感性の豊かさの元のなっているものは何なんでしょうね。

今月二十七日ご興味ある方、是非。