2014-04-02

2014年4月2日

この時期に散歩をすると、ここにも桜があったのか、という宝探しみたいな楽しみがあって、首があちこちとせわしないです。まだ強く吹く春風に揉まれて歩いていると、休憩のための散歩のための休憩が必要になります。

今日も公園の柵に座って一休み。
少し向こうには林や遊具があり、目の前にはぽっかりと空いたような四角い地面が広がっています。
ずうっと上ばかり見ていたので気がつかなかったのですが、春のうららかさにそぐわない落ち葉がまだ散らばっているのでした。

ふわっと空気が動き、サーッと風の音がすると、葉っぱがスワーッと舞い上がります。風音に合わせて落ち葉が舞い上がるので、音楽に合わせて踊る女の人のスカートの裾のよう。

…そういえば、箏曲で「落葉の踊り」という曲があって、それを弾く時はいつも秋をイメージしていたけど、実は違うのかしらん。
葉が落ちる晩秋には台風はおさまっているし、冬は空気が動かない。実は、春の曲だったりして。

…それにしても、風が吹く度に舞い上がる葉っぱって、決まってるみたい。
微かな風で地面を這っていく葉っぱもあれば、どんな強い風でも動かない葉っぱがあるわ。意地を張っているのかしら。
それにしても、あの一枚の葉っぱはよく動き回るわね。意志があるみたい。

またサーッと風の音がしたので、その葉っぱがどうするのかをよく見ようとしました。

「うわあー、待ってーー!」
と突然大きな声がしたと思ったら、男の子が飛び出してきて、その落ち葉を追いかけ始めました。
風がサーッ、葉っぱがスワーッ、「待って、待ってー」。
その四角い地面の上で、すごい勢いでその落ち葉と鬼ごっこを始めました。目が回りそうです。
サーッ、スワーッ、「うわあ、待ってよ、待ってー」

私はその落ち葉の動きを面白いこととして離れて見ていて、男の子は落ち葉と面白いことをしている。
この違いはなんだ、と男の子に目が釘付けです。

風がおさまったら、その男の子は、先がクルクルと丸くなっている長い木の枝を探してきて振り始めました。
長い枝がビヨンとしなった後に、先のクルクルのせいか、ビヨヨンと変な動きをします。ビヨンビヨヨン、ビヨンビヨヨン。
どこでこんな面白そうなの見つけたんだろう。

今度は、くの字に曲がった短い棒を見つけたようです。ビヨンビヨヨンを左手に持ち替えて、右手でその棒を投げ始めました。くの字といっても、三分の一くらいのところで曲がっているので、ガクガクッと不思議な軌道を描いて落ちていきます。拾っては投げ拾っては投げ…。私も一回でいいから投げてみたくなります。

と思っていたら、小高い丘の上からすごい勢いで駆け下り始めました。加速がかかるのが面白いらしく、登ったら一回止まり、力を抜いて足を踏み出し、勢いがつくままに突進していきます。転んでビヨンビヨヨンが突き刺さるんじゃないかと心配になりますが、関係ないようです。
向こうの遊具で遊んでいた子供達も後に続き始めました。でも彼らは頂上で足を止めるでもなく、単に駆け下りて、途中で力を入れて足を止めています。加速ということに興味を持っているわけではなさそうです。

この遊び方の違い。
この男の子だけは、重力とか遠心力とか、物理的な現象を当たり前のこととせず、身体で面白がりながら繰り返し繰り返し反復していました。
ああ、意志の力と関係ない部分で、地球に住んでいるこの身体の使い方を、こうやって掴んでいくんだなあ。

いつの間にか男の子の姿が見えなくなっていました。
またしばらく考えごとをしていたのですが、さすがにお尻に柵の跡がつきそうなので、さて、帰ろうかと立ち上がろうとしたとき、左の茂みがガサゴソ。
その男の子が出てきました。まだ手には先がクルクルの長い枝。
ビヨンビヨヨンと振りながら去っていきました。

おっかしくなり、「私も身体で楽しまないとなあ」と、周りに誰もいないことを確認して、久しぶりに軽くスキップをしながら歩き始めました。

あれ?
邦楽でいつも処理に困る、えーらやっちゃえーらやっちゃ、ヨーイヨーイヨーイ、の「ヨーイヨーイヨーイ」の時のようなハネるリズムとそっくりかも。
ジャズのスイングも、こんな感じ?
歩くのから、楽しくなって身体が弾んできてスキップを始める感じのリズム?
そして、それに勢いがついてくるかでそのハネ方が変わる?

男の子に大きなヒントをもらい、気持ちが弾んできて、スキップのハネが大きくなったのでありました。